実家の片付けも、いよいよ大詰め。 昨日は業者に頼んで、冷蔵庫と古いステレオコンポを自宅まで運んでもらった。
長年放置されていたそのステレオは、お世辞にも綺麗とは言えず、少しカビ臭い。 けれど、丁寧に汚れを拭き取り、ハードオフで手に入れた中古のレコードに針を落とした瞬間、リビングの空気が一変した。
昨日、一緒にその音を聴いたのは彼女。 デジタルネイティブな彼女にとって、レコードは未知の世界だ。
「こうやってジャケットからそっと出して、指を触れないようにプレーヤーに乗せるんだよ」
僕がレコードの「作法」を教えると、彼女は真剣な表情で見入っていた。 そして、スピーカーから流れてきた松田聖子の歌声。
「あ、これ……!」
彼女がふと思い出したように言った。 大好きな松田聖子のコンサートで、聖子ちゃんがよく言っていた「次はB面の曲を歌います」という言葉。ずっと何のことか分からなかったけれど、このレコードの裏側のことだったんだ、と。
「B面の意味が、今日やっとわかった」
そう言って喜ぶ彼女と、ソファで並んで聴く昭和の名曲。 実家から運んできた「古い荷物」が、今の僕たちの時間をこんなにも豊かに彩ってくれるなんて、思ってもみなかった。
手間をかけて掃除をし、手間をかけて針を落とす。 そんな「不便な豊かさ」に、僕もしばらくハマってしまいそうだ。
